第4 犯罪の成否
1 犯罪の成否全体の型
(1)犯罪の成否の目次
(ただし,構成要件該当性の論述は,ある程度柔軟性がある。)
code:犯罪の成否の目次
第2 構成要件該当性
平成○○年○月○日午前○時ころ,□□において,AがVに対して……して・・・した事件について,◎◎罪の成否を検討する。【検討対象事件の特定】
1 構成要件・客観面
(1)◎◎罪の構成要件・客観面
◎◎罪の客観面の構成要件は,[a],[b],[c],結果,因果関係である。
(2)[a]について
ア [a]の意義
イ 事実認定・あてはめ
(ア)[a]に該当する事実の認定
(イ)(ア)の事実が[a]に該当するという評価を基礎づける事実の認定
(ウ)(イ)の事実により,(ア)の事実が[a]に該当するというあてはめ
ウ 証拠の評価
(3)[b]について
(4)[c]について
(5)結果の発生について
(6)因果関係について
(7)着手時期,既遂時期
2 構成要件・主観面
(1)◎◎罪の構成要件・主観面
◎◎罪の主観面の構成要件は,故意と[d]である。
(2)故意
(3)[d]
(4)犯意
第3 違法性阻却事由,責任阻却事由,罪数その他法律上の問題点について
(2)注意点
ア 論述順序に注意!
code:順序
ⅰ 構成要件→その他法律上の問題点
ⅱ 構成要件客観面→構成要件主観面→共犯性
ⅲ 構成要件要素の意義→事実の認定・あてはめ(→証拠の評価)
イ 書き忘れに注意!
全部を検討する。その事案で問題にならなくても,項目を作った上,本件では問題にならない,というような感じで書く。
特に,実行の着手・既遂時,犯意の発生・具体化は,忘れやすいので,注意しましょう。
2 犯罪の成否の基本
(1)記載の留意点
ア 論述順序
code:順序
(ア)客観面→主観面→共犯性
(イ)構成要件要素の意義→事実の認定・あてはめ(→証拠の評価)
イ 証拠の扱い方
争いがなければ,「関係各証拠によれば」でよい。
A供述使ってよい。
ウ 全部書くこと
全部書く。
特に,忘れやすい次の二つに注意。
code:注意点
(ア)実行の着手時・既遂時
(イ)犯意の発生・具体化
(2)構成要件要素をとらえた論述
構成要件要素を正確に捉えた上で,構成要件要素ごとに,そのすべてを検討するようにする。
そのために,刑法各論が重要。
犯罪の成否は,刑法各論が決定的に重要。
条文と判例をおさえておく。
(3)論述順序
ア 客観→主観→共犯性
これが基本の順序。検察の考える刑法適用の思考順序なので,よほどのことがない限り,逆らわない。
横領の場合などは,客観面で,主観的要素である不法領得の意思を検討する必要がある。その場合は,一言断ってから,客観面のところで,論じた上で,主観面では,客観面での記載を引用することになる。
イ 各構成要件ごとの検討
各構成要件要素ごとに,
code:記載順
構成要件要素の意義(解釈)→事実の認定・あてはめ→証拠の評価
というように分けて記載すると,わかりやすくすっきりする。
順番はどうでもいいけれど,要するに,分けて書く,ということ。
(4)認定した事実の書き方のポイント
code:ポイント
ⅰ 構成要件該当事実として認定する事実,
ⅱ その事実が構成要件に該当することを基礎づける事実
に分けて,具体的事実を認定する。
たとえば,殺人罪の実行行為であれば,殺人罪の実行行為とは,「人の死の結果を生じさせる現実的危険性のある行為」だから,ⅰとして,これに該当する行為を認定し,ⅱとして,その行為に人の死の結果を生じさせる現実的危険性があることの基礎となる事実を認定する。
したがって,
code:例
「Aが,Aの方を向いて立っているVに対して,その正面から,自己の右手に持った本件ナイフを自己の右胸の高さで構え,Vに体当たりをしながら,そのナイフでVの左胸部を1回突き刺したこと」
がⅰにあたり,
そして,
code:例
・AがVを待ち伏せしていたこと
・深夜であり,周囲に人がいなかったこと
・Vに反撃の余地がなかったこと
・凶器の形状
・創傷の部位・程度
などの事実が,「人の死の結果を生じさせる現実的危険性のある行為」と言えるための基礎事実であり,ⅱにあたる。
3 構成要件客観面
(1)構成要件ごとに書く
書きやすい順序があるので,順番も考えましょう。
(2)主観的なことを書くこともある
たとえば,横領行為は,不法領得の意思の発現だから,客観面で主観的なことを論じざるを得ない。
(3)実行行為そのものと評価の基礎
構成要件に該当する事実そのものを書いているのか,その事実が構成要件に該当するという評価の基礎になる事実を書いているのか,区別する。
項目を分けると,わかってるな,と思ってもらいやすい。
(4)書き忘れしない
着手・既遂など。
4 構成要件主観面
(1)故意・犯意・主観的構成要件要素
主観面で記載するのは,故意・犯意・主観的構成要件要素。
財産犯なら,不法領得の意思を忘れない。
(2)故意
code:考え方
◎「客観面の構成要件該当行為」+「その認識」=「故意」
△「犯意発生」+「それが着手時まで継続」=「故意」
(『考え方』p.11 7(2)の記載は,△の意味じゃないらしい……。こう読めるんだけどな。。。)
Aが構成要件客観面を認識できたことを基礎づける事実を認定することが必要。
ア 故意は,構成要件該当事実客観面の認識・認容
故意は,構成要件該当事実客観面の認識・認容であることを前提に論じる。
よって,Aが,既に認定した構成要件客観面について,認識・認容していたことを示す。
イ 2つの類型の区別
2つの類型がある。区別すること。
code:類型
(ア)客観面の構成要件該当事実それ自体から認識・認容が推認できる場合
(イ)構成要件該当事実以外の基礎事実をふまえないと認識・認容が認定できない場合
(イ)については,基礎事実を認定した上,その事実によれば認識・認容がある,という流れで論じる。
ウ 犯意と故意との関係
先に犯意を認定した上で,犯意が継続しているから故意がある,というのは,よくない。
犯意が継続しているから,実行の着手時点で認識・認容があるので,故意がある,なら,OK。
(3)犯意
必ず書く。
特に,共犯事件の場合は,重要。
ア 発生時
いつ何がきっかけで発生して,そのときの内容はどのようなものか。
イ 具体化時
いつ何がきっかけで具体化し,そのときの内容はどのようなものか。
5 共犯性
code:認定方法
ⅰ「犯意の相互認識」→「正犯意思」→→→→→「共同実行の意思の合致」
ここで,共謀のメルクマールを活用
ⅱ→「共謀の成立」
ⅲ犯罪行為・結果等が,「共謀に基づく」
ア 共犯を認定するには
https://gyazo.com/201609e8d96fc63b9683faac1432e9dc
イ それぞれの犯意が前提となること
共犯性のスタートは,犯意の相互認識である。
したがって,共犯者それぞれの犯意が前提となっている。
共犯事件では,犯意を丁寧に論じておくこと。
ウ 副問で出たときの注意点
副問で,共犯性だけをピックアップされたときも,上記枠組みで考える。
したがって,共犯双方の犯意を認定することが必須となる。
いきなり共謀のメルクマールのみを検討するのは,検察的には,よくない。
6 阻却事由,罪数等
7 別の送致事実で起訴する場合
(1)送致事実と起訴事実が異なる場合
犯罪の成否起案では,送致事実とは別の犯罪事実で起訴すべき場合が多い。罪名が変わる場合もあるし,罪名は同じでも実行行為ととらえる行為が変わる場合もある。
その場合は,なぜに送致事実とは別の犯罪事実で終局処分をするのか,をきちんと書くこと。
(2)異なるかどうかの見分け方
送致事実と起訴事実を見比べればよい。
ア 送致事実はどこを見ればわかるか
送致事実は,送致書,弁録,送検直前の捜査報告書を見れば,何となくわかるはず。
イ 起訴事実はどこを見ればわかるか
起訴事実は,最後のAPSを見る。
担当検察官は非常に優秀なので,最後のAPSでは,たいてい,起訴事実に必要十分な事実を録取している。
(起訴事実を決めるのは,起案者ではなくて,担当検察官である(とまで言うとちょっと極論ですが,でも,私はそう思ってます。)。)
(3)異なることの理由
大きく分ければ,2パターンである。
code:パターン
ⅰ 法律上の問題:送致事実では犯罪不成立の場合。
ⅱ 立証上の問題:送致事実を立証しきれない場合。
ア ⅰ法律上の問題
強盗の事案で,財物奪取の意図が生じる前に行った暴行によって傷害結果が生じているにもかかわらず,警察が強盗致傷で装置してきた場合。
メーカーの支店長が商品を横流しして商品代金を着服した事案において,商品を発送した時点では不法領得の意思がまだなくて,商品発送後商品代金振り込み前に,商品代金を自分のものにしてやろうと思いついた場合(新61期集合修習A班起案2のひとつめの横流し行為)
イ ⅱ立証上の問題
メーカーの支店長が商品を横流しして商品代金を着服した事案において,商品を発送した時点から商品代金を自分のものにしてやろうとの不法領得の意思があったものの,発送した商品の型番等が特定できない場合(新61期集合修習A班起案2のふたつめの横流し行為)
8 おまけ 財産犯処理の基本
教官が言っていたことそのまま。
code:【財産犯処理の基本】
常に立証を考えつつ,以下の点を順に検討していく。
1 結果(被害)から行為を見る。
つまり,実質的な被害の主体と客体をまず特定する。
被疑者の行為から結論を先に決めない。
2 被害の客体と主体を特定する際は,民事上の権利関係をきちんとふまえる。
自称被害者や送致事実の被害者にこだわらない。
3 被害の客体が問題となる事件の場合,まず,財物(金銭なら現金,小切手,預金の順で),つまり,1項犯罪の成否を先に検討する。
4 被害が財物に決まったら,所有者と占有者を判断:奪取罪か領得罪がを決める。
奪取罪なら,奪取の態様を判断する。
詐欺と横領は,犯意の発生時期がポイント。
各要件の法的問題と立証の容易さで最終的に判断する。
5 財物の処理が困難な場合は(1項犯罪での処理が困難な場合は),2項犯罪を検討し,財産上の利益の具体的内容,処分権者と処分意思,に着目し,上記同様の検討をする。
6 不可罰的事後行為の最高裁判決を正しく理解すること。
(最大判平成15年4月23日刑集57巻4号467頁)
7 実質的な被害者が協力しない場合,あるいは立証が困難な場合などは,例外的に,形式詐欺などで処理することもある。
8 背任罪は,他の犯罪のすべてが成立しないときの,最後の砦。